EP7で決着は着いていた。『STARWARS/スカイウォーカーの夜明け』感想(ネタバレあり)


映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』最新映像 “エンド編“

 

 フォーラムで見た。フォーラムってなんだよ(笑)

 まず、EP7視聴後に、ある程度新三部作の行くすえについて予想?を書いていたので、まず引用する。この文章はそういう意味ではある種の答え合わせ的な位置ずけとして残しておく。あと最後に、「僕の考えた理想のEP9」を書く。なお、細かい設定上のあれこれは指摘してる人が500億人いるのでそちらに譲る。あと昔の私めっちゃ熱量あってワロタ。

 
一部引用。

 カイロ・レンは絵にかいたような「家父長制内面化失敗男子」である。つまり、甘ったれていて、幼なく、未熟で、その上いじけ癖と癇癪持ち、しかも親を幻滅させるのが得意、というキャラクターとして描かれているわけで、悪党キャラクターというよりも、むしろ主人公とぶつかって改心される枠である。こいつを敵として引っ張る意味はあんまりない。


 なぜなら、まず第一に、今作の主人公はレイなのだから、レイの敵キャラはもっとオーソドックスな強キャラ=乗り越えて意味がある壁として設定するべきだ。だって、そういう単純さこそがスターウォーズの魅力、分かりやすさなわけじゃないですか。カイロ・レンのような未熟な坊やとの戦いを通して、レイは何を学べますか? え? ぐずってる子どものあやし方とか? それこそ差別的だろう(耐え難い差別だ)! 

 第二に、カイロ・レンを引っ張るということは、スターウォーズ新三部作を「強い女の子との戦いを通して、いじけ男子が改心する物語」にするということを意味しているわけで、いや、それはスターウォーズの仕事じゃないだろ、何がどう間違っても! と私はどうしても思っていまうわけである。一応言っておくと、「強い女の子との戦いを通して、いじけ男子が改心する物語」、私は個人的にとても好きだし、カイロ・レンもキャラクターとして単体で見ればとても魅力的だと思うが、スターウォーズという極めて公共的な作品にそれらが必要か、という点で考えると、どうしても疑問符がついてしまう。だってねえ、そんなん見て喜ぶのは一部の自信がない男性諸君だけじゃないですか。スターウォーズは子どもとか、それこそ女性が見ても楽しい作品であるべきなんじゃないんですかねえ?

 一応整理すると、上に書いたことの論点は二つである。

・論点1 カイロ・レンは主人公レイの敵役として適切かどうか

・論点2 カイロ・レンが改心する物語でいいのか

 

  結論としては、論点1については私は間違っていた(つまり新三部作は立派だった!!)けど、論点2についてはやっぱりどーなのという気になってしまう。

 まず、カイロ・レンが主人公レイの敵役として適切だったのかどうか。これについてはEP8から、カイロ・レンとレイが共闘したり、あるいは心を通わせたり、という話に変わったのでまあそこは上手くやったのではないか。結局スノークパルパティーンを倒せたのは二人の力による物だしな。まああと冷静に考えて、この枠組みで解釈すれば旧三部作だって「父親が改心する物語」とも読めるので、まあこの構造自体は別に問題視しなくて良い、という感じだ。カイロレンとレイを対置するというアイディアは悪くなかったし、結構機能していた*1

 一方、論点2についてはだいぶ終わっている。正直、「だから言ったじゃないか!」と言わずにはいられない。EP7見て新時代の女性ジェダイ云々とか言ってた人は反省してほしい。しかも最後キスしてたしね。シェイクスピア研究者のsaebou先生も怒ってたけど、カイロレンは「新時代の女性主人公」とキスしていいようなキャラクターとして設計されていないんですよ!!!!! 最初(EP7)からね!!! まあ頑張って良いところを見つけるとすると、カイロ・レンがハン・ソロと対話し、ベン・ソロに戻ったところの演技はすごく良かったよ。私は和解シーンが結構好きなので甘くなってしまう側面もありますが。。。

 

 あと、別途これだけは言いたいのだが、作劇の仕方としてお使いクエストが雑だった! なんでこんなに雑に感じたのだろうか、やっぱり知らない話がどんどん出てきたからだよなあ。例えばEP6では、「シールドが完成する前にデススターを叩く!」「やっぱりシールドがあったのでエンドアの月にあるシールド発生装置を破壊する!」という流れがあったたし、EP8では「ハイパースペース航法では逃げきれない!」「トラッカーを切る!」という一連の流れがあってわかりやすかった。やりたいこととやってることの因果関係が明確というか。一方EP9はすごいお使いクエストの連続感があって、スピード感はあったけど見ていてすごい疲れた。まず話の出発点がわかりにくい。上記2例は単純でわかりやすいけど、EP9は「エクソゴルに行く!」から始まる。うん、なんだっけそれ? もちろん、スターウォーズの醍醐味の一つは宇宙探検なので、どこか謎の場所に行くという問題設定自体別に良いのだが、最初にカイロ・レンが行ってどういう場所か分かってるので、まあそういうワクワクはない。あとは最終的にカイロ・レンくんのファイター奪って目的地に行っちゃうのは正直ちょっと寂しかった。もっと各メンバーの努力が報われないと、クエストの単調さもあるし、レイの独り相撲感がだいぶ強くなってしまう。

 

 じゅああどういうEP9が見たかったのか。個人的にはやはりEP8の流れで、壊滅した同盟軍を再組織するところを見たかったなー。辺境惑星の謎エイリアン艦隊を味方につけるべく交渉したり、モン・カラマリにおける造船ドックで新しい艦隊を建造したり、元老院を再結集して反ファーストオーダーの旗幟を掲げたり。再組織を描いてこそ、新三部作が頑張ってきたマルチヒーローシステムが光るというものでしょう。組織作りとか外交という面は、戦闘に比べて人間模様とか武力以外の多様な貢献のあり方とかが描きやすいし、何より、そういった「共和国体制においてジェダイが伝統的に担ってきた役割」を、非ジェダイ人材でもこなせるんだというメッセージこそ、新三部作において必要だったんでは???と強く思う。そもそもEP7、EP8は、マルチヒーローシステムというか、旧作品群においてルーク一人が担っていた役割(パイロット業務とか謎惑星冒険業務とか勇気を発揮する業務とか)をポーやフィン、あるいはレイアやローズなどに分散させて、チーム、協力、多様性の尊重、などなどの重要性を描いていて、これはだいぶ良いことだったはずだ。そういう良さを殺してしまって、むしろレイというキャラクターが全てを解決してしまう方向性に行ってしまったのが非常に残念だった。

 

 

 

 

 

 

 が、である。実は私はこの映画を許してしまっている。何故ならば……

 あのアソーカ・タノがクレジットされていたからである!!(声だけ出演)

 いやね、EP9の「ファンダムに媚びてる感」をいうのであればこういうところだと思うんですよね、ほんとずるい。悔しいけど、アソーカがレイを応援したならね、僕もね、しますよ(吹っ切れた表情)。彼女が正史(非スピンオフというニュアンスで使っている)に初めてクレジットされた作品なんだからね、もうね、100点満点なんですよ……EP9はね。

*1:まあ私もね、嫌いじゃないんですよ。むしろ好きなんですよ。だけどそれをSWという公共物でやるか、というのが論点なわけですね。