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みた映画とか

映画

 

石井聰互作品

 

 

逆噴射家族

 

 

逆噴射家族 [DVD]

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 監督が石井聰互、脚本が小林よしのり、という謎コンビによる映画。石井聰互作品の中では一番公的に評価されてるらしいけど(賞的な意味で)、個人的にはあまり評価が高くない一本。最大の理由は、小林よしのり映画になっている点だろう。キャラクターがあまりに強すぎる。祖父、父、母、息子、娘、すべてが小林よしのりキャラであって、話もまた小林よしのり的で、つまりは小林よしのり映画でしかない。狂い咲きサンダーロード的な話を期待していたので肩透かしを食らった気分で見てた(まあ「逆噴射」なのである程度近くもあるのだが)。

 小林よしのりは現象的なアホさにとどまっている限り面白いのだが、理論的アホさに進出すると救い難くなるタイプの作家であり、そういう意味では案外映画と相性いいなとは思った。あと行き場の無いおじいさんかわいそす。

 

水の中の8月

水の中の八月 [DVD]

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 オカルト・SF青春映画かな? かなり良かった一本。博多の町並み・文化のディテールがちゃんとしていたので(市が全面協力らしい)、その中で生きる少年たちの姿が極めて自然に描かれていてよかった。祭りのシーンとか、電車や上空から見る町並みの見せ方がすごくうまくて、夏という雰囲気、オカルトというドロドロ設定と合わさって幻想的な映像に仕上がっていた感。

 サブキャラが優秀で、松尾れい子さん演じる美樹さんがめっちゃかわいい。年上で面倒見もいいしなあ。電気屋でアルバイトしてるオカルト少女とか神やろ(感覚としてシュタゲの鈴さんに近いキャラ。パパっ子要素は無いけど)。

 なんかこの時期はこういうのはやってたよなー的なことを思い出しながら見た。95年の作品だしね。関西地域はこういうのをやっても許される感じがするんだよな。エンシャント日本やし。

 あと、主人公の部屋がよかった。通路に階段をいちいち設置しないと入れない部屋とか、秘密基地感マックスで大変よろしい。ああいうところに住みたい。

 

 

狂い咲きサンダーロード

 

狂い咲きサンダーロード [DVD]

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 原点にして頂点。最高の映画。

 

 

こっからはなんとなく手にとった作品

 

ニーチェの馬

 

 

ニーチェの馬 [DVD]

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 ハンガリー映画。煽り文に「眠くなる」とか書いてあったが、とんでもない。これはこれで傑作。

 6日間に渡る親子の暮らしを描いた作品で、世界が終わるまであくまで「日常」を続けようとする人間が描かれていて、その点において正当な日常モノと呼んで全く問題のない作品である。最初の3日間は事もなしに過ぎていくのだが、その後だんだん世界が狂っていくのがわかる。最後はコズミックホラー。

 まず冒頭シーンに登場する、疲れきった馬がいい。最初にこの馬が映った瞬間、俺だこれ……となる。この馬はもう疲れきって、壊れてしまっていて、ある日お父さんが馬車に乗って外出しようとするのだが、馬がいうことを聞かない。お父さんはムチで打つ。しかしそれでも馬は動かない。結果的にお父さんは外出を諦める。娘は馬を厩舎に戻す。という一連のシーンがあるのだが、ここが圧巻。

 「馬が動かないんで休みます」的な展開からも明らかなように、この映画はシュール的な面白さがあったりする。真面目なテーマ音楽にそって、なんでもない日常の生活をしつこくカメラに収めていくスタイルはシュールギャグ的なところがあり、ついついくすりと来てしまうことも。じゃがいもをもつらもつらと食べるシーンとか。

 

 井戸が枯れたあとこいつらなんですぐ帰ってきたんだ? というのがこの映画の謎だと思う。SF学派によれば、彼らは別の世界に行った論、丘の向こうには別の惑星が広がっていた論などが提出されており(「永劫回帰」を持ち出す輩までいる)、それも解釈としては悪くないのだが、そこまでラディカルに読み込まなくてもいいんじゃないかという気はする。キリスト教的モチーフにあふれている映画だし、途中で「街の連中は堕落した」とか言い出すおっさんが登場したりすることからみて、あの丘から見えたのは多分壊滅した街だったのだと思う。井戸が枯れて街に行こうとしたが、街が壊滅していたので戻ってきた、みたいな。街の方が先に終わってしまったのだ。世界の終わりはすべての人に対して平等に訪れるのだろうが、多分あの二人が暮らしていた世界の崩壊が一番遅かったんだろうなみたいなことを思ったり。

 最後のシーンが圧巻。世界から光が失われたあと、親子は最後の食事をする。もう火が無いので、テーブルの上には生のじゃがいもだけがゴロリと転がる。親父さんが生のじゃがいもを食べようとして諦めるシーンとかすごかった。だんだんフェード・アウトで画面が真っ暗になっていくのだが、最後の最後まで親子の顔肌の白色だけが残る。これがすごく不気味。最後は皆闇に包まれてしまう。これが虚無だ。これが絶望だ。すごくよかった。